第14話 初めてのお風呂
セリカさんに案内され、連れて来られたの『
三階建ての横に広い建物で、一階はレストランの様な綺麗な内装になっている。
全部屋に個室の風呂が付いおり、客層も一般市民ではなく収入の多い裕福層で溢れかえっていた。
言われずとも分かる、お値段がお高めの宿である。
「俺らには似合わなくないですか、セリカさん?」
「大丈夫です!少し両親と話をしてくるので待っていてください」
そう言うやいなや、セリカさんは店のカウンタ席で接客をしている中年の男性の下に向かって行く。
雑談をする様な軽い感じでセリカさんはその男性と話しており、しばらくすると何処か嬉しそうな顔をして帰って来た。
「お父さんと交渉してみたんですが、全員好きなだけ泊まっていって良いそうです」
「えっ、さすがにそれは悪いですよ。セリカさん……」
「良いんです! さあ、遠慮はしないでください!」
俺とニムとレナをグイグイと押し、流されるまま二階の角の部屋に案内されてしまった。
しかも、レナさんは一人部屋なのに、俺とニムだけ相部屋と言うオマケ付きである。
「あの、セリカさん。なんで俺とニムだけ相部屋なんですか?」
「え? お二人はご兄妹か何かだと思っていたのですが……」
「あ、いえ俺達は……」
「違います! 私とレイさんは夫婦です!」
それとも違うが、あながち間違いでもないので否定しきれなかった。
ニムからの衝撃を事実に、セリカさんはしばらく息を呑んで硬直し、すぐさま頭を下げ始める。
「す、すいません。髪の色が似ていたので私てっきり……」
「まあ、まだ結婚はしてないけどね」
ニムと俺の関係を一言で表すなら、どんな言葉が似合うのだろうか。
なんて事を考えながら、いつも取り「言わないお約束です」と未婚の事実を否定してくるニムを撫でていた。
「で、では、ごゆっくり……。夕食は後でお持ち致しますので……」
俺とニムの様子を見たセリカさんが、そう言いながら部屋から出て行く。
ニムと俺(メーさん入り)だけになった部屋はとても静かで、何だか途端に気まずくなった。
そんな俺に対し、ニムは興味深いと言った様子で部屋の中をあちこち回っている。その顔には緊張など全く伺えなかった。
「レイさん。この家、変わった部屋がありますよ?」
そう言ってニムが指さしたのは浴室だった。
「そこは風呂だ。体を綺麗にするところだよ」
「わざわざ水浴びする部屋を作ったんですか。怠惰と傲慢を極めてますね、人間って……」
呆れてニムは言うが、間違ってないので否定出来なかった。
「まあ、お風呂がある家に住んでる人なんて、だいたい金持ちだけだよ。普通の人は共用の風呂を使ってる」
「人の生活は便利ですけど、差が激しいですね」
「そこは仕方ないかな……。でも、お金を持ってる人はそれだけの事をして来た人達だからね。当然と言えば当然の権利なのかもしれないな」
「人間の文化って面倒臭いです」
ニムがまた一つ人間の事を学んだ。
人間社会の面倒さは俺も感じているが、命の危機に怯える事無く安全に暮らすために出来たものなので、我慢するしかないのだ。
「まあ、暗い話はここら辺にしといて、少し休もうか。今日は半日動きっぱなしだったし……」
窓の外を見れば、もうすっかり夜である。
「今日はもう夜だし、ユウさんの事はまた明日だな」
「じゃあ、今日はご飯を食べて寝るだけですか?」
「それとお風呂だね。せっかくだし使わせて貰ってみるか。ニムは最初に入る? それとも俺の後が良い?」
「入り方が分からないので、レイさんと一緒に入りたいです」
そう来てしまったか。いや、当たり前と言えば当たり前な話だ。
ニムはドラゴンな訳だし、お風呂の使い方なんて知らないくて当然だろう。
どうして予想出来なかったのかと、俺は心の中で後悔した。
しかし、結婚もしていない男女が一緒に風呂などと言うのは如何なものだろうか。
「まあ、ニム相手なら良いか……」
子供にお風呂の入り方を教える感じで良いか、と俺はあまり気にしない事にした。
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