第29話 龍起

「そういえば先生。こっから十キロぐらい向こうの山、あるじゃないですか」

「竜神山ですか?」

「はい。あれ、なんで『竜神山』って言うんですか?」

「あぁ。なんでかというと……本物だから、ですよ」

「はい?」

「あれはかつて、実在した巨大な龍なんです。君は山の山道がなぜ『龍の背中』と呼ばれているのかしっていますか?」

「えっと。小道に刺さっている石が、鱗みたいに見えるから、でしたっけ?」

「みたいに、ではなくそうなんです。かつてあの路には一つだけ違う石、逆鱗があったんです。でもある日、誰かが逆鱗に触れた。以来、あの龍は死んで、山になった」

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