第19話 窮屈

 「人生って窮屈だと思いませんか? 役割に追われ、関係に傷つき、小さな不幸が毒のように忍び寄る。全く、同情せざるを得ませんよ」

 犬だ。石壁の隙間に挟まった柴犬を面白がって撮ったら、件の犬が人語で話しかけてきたのだ。柴犬は首だけを私に向けて「人生は窮屈だ」と独り言ちている。

「まあ日頃のストレスの発散に、石壁に埋まった犬を撮ってネット上にアップしたくなったのでしょう? でもそれは恥さらしです、犬にも肖像権はありますよ」

「すみません」

「分かればよろしい。では先ほどの、私を撮った写真は削除してくださいますね?」

「すみません、もうSNSにアップしちゃいました……」

「お嬢さん!」

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