第14話 手作りチョコレートが一つ

 「智樹ともき~、今日はいくつチョコもらった?」

 夕暮れの放課後、軽薄な声が背後から聞こえる。俺の腐れ縁、義弥よしやは認めたくないがモテる。彼は綺麗にラッピングされた小箱を両手に抱えるほど持っていた。

「嫌味かよ。大体、バレンタインなんて……くだらない」

「ははっ、すまんね! ……でもお前、ゆうちゃんからは貰うんだろ?」

「あいつとはそんな仲じゃない」一週間前、悠は俺に師事を頼み、俺も幼馴染みのよしみでチョコ作りを指南した。彼女には渡したい相手がいる。でも、それは……。

 義弥が困った表情で教室を出る。俺も帰ろうと席を立った時、悠が教室に入ってきた。後ろ手に何かを隠し、俯きつつこっちに近づく。悠は俺を上目遣いで見る。

「と、智樹……! 渡したいものが、あ、あってさ……」

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