第5話 電磁

 地方活性化のため、とある町に来た。何でもそこは、スマホやパソコンの普及率がほぼゼロだという。現代においてそれは致命的だろう。

「こんにちは、話は伺っております。さぁ、狭いですけど」

 地元民の挨拶と同時に現れた自動車に、私は目を疑った。浮いている。タイヤが無く、車は地面から五十センチほど浮いて走行しているのだ。

 車内にいる時も不思議な現象は続いた。助手席にあったドリンクホルダーが、ひとりでに後部座席の私のもとへ運ばれた。車の速度も、乗用車では考えられない速さで駆動している。明らかに都心よりも発達した技術に私は混乱を隠せず、スマホで本部と連絡を取ろうとした。その時運転席にいる地元民が、私に向かって言った。

「お客さん、ここはそこら中に車用の磁石があってな、電子機器はみな狂うんよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る