第6話 サルベージ

 「患者は?」「現在、目立った異変は見られません」

 看護師から容体を聞き、私は温厚に接するよう努めて病室に入る。患者は安らかに眠っていた。私と二回りほども年が離れているように見える。

「今ここで施術を始めよう。準備を」

 後ろで準備を始める看護師。私は特殊なグローブをはめる。

 この患者の病名は「記憶喪失」。今までは治療法の確立しない病とされていたのだが、医療革命により、記憶の引き揚げサルベージを行い完治できるようになった。

 準備が整ったので、手術に映る。患者の脳に器具をはめ、グローブ越しの手で脳内を探る。数時間の後「記憶」を探し当て、患者の脳に接合する。手術終了だ。

 器具を片付け、眠った患者を起こさぬように、私たちは静かに室内を去った。

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