第20話 飯綱

 乗っていたクルーザーが難破し、私はとある島に流された。幸運なことに、中々の広さの島には町が三つほど形成されていたので、飢え死には避けられた。私は現地の方々に介抱されつつ、一週間後の定期便の船を待つことにした。

 それにしてもこの町は食べ物が非常に美味だ。理由を民泊先の老父に聞くと、

「それはな、イイズナ様が山から食べ物を恵んでくださるのさ」

 イイズナ様、この島の伝説。私は船を待つ間、この伝承についてできる範囲で調べてみる。イイズナは飯綱と書き、毎朝山に食べ物を落としてくれるらしい。

 翌朝、老父がイイズナ様の恵みを取りに行くというので、好奇心で同行させてもらう。山の中へ入ると、明らかに誰かが落としていった魚や山菜がある。食べ物を辿るとそれはいた。イタチだ。イタチが山菜や魚介類、果物を——排泄していた。

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