第19話 青菜

 正午。露天商たちがおのおの店を構えて、往来する土着の国民や観光客へ、商品をこれ見よがしに並べ始める。私も彼らのように担いだ荷を広げて商品を並べる。

 数分後、子連れの女性が私の商品を見に来る。顔立ちが似ている、家族だろうか。大きい籠に入った商品をまじまじと見、そのうち二種類を指差して「これとこれください」と現地の言葉で言ってきた。

——元はといえば旅先で泊まらせてもらった婆さんの手伝いからだった。現地を去るまでの三日間だけのつもりが、私が手伝うと物珍しさで買ってくれる客が増えたからと、一か月経った今もこうして婆さんが育てた菜っ葉を売っている——

 青菜を受け取ると、母親は礼をして去っていった。この青菜は、私の母国では違法の植物だが、この地では家庭の共となっている。私は再び露天商を再開した。

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