第20話 デュオ
かつて僕らは一人だった。産まれたときから完全で、何よりも優れていた。
世界がまだ海に覆われていたころ、僕(ら)は海に住んでいた。僕が望めば海はその姿を変えた。僕が望めば海はその色を変えた。
だけどあの時。僕が望み、海が透明に近いブルーに変わった時。僕が海の中を泳いでいると、海中に黒く重たい塊がさ迷っているのを見つけた。
僕はその塊が気になって、何気なく手に取ってみた。そこから世界は一変した。
塊は内側から勢いよく弾け飛ぶとあちこちに散らばっていった。海に着水した塊の欠片はみるみる大きくなって、大地へと変貌した。すると今度は、僕の体が裂かれていって、遂に僕は僕らになった。そして一方は海に、一方は陸でしか生きれなくなってしまったんだ。僕らは今も、もうひとつの僕に戻れていない。
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