第21話 巌

 三日間の有給休暇を使って、近場の避暑地へ旅行に行くことにした。昼頃から車を走らせて間もなく二時間になる時、俺はあるトラブルに遭遇した。

「渋滞かよ……」

 空調を効かせた車内で俺は独り言ちる。

 ふと隣の車を見る。ワインレッドの軽自動車に乗った男は、サイドガラスを全開にし、コンビニ袋から取り出したサンドイッチを頬張っている。俺は少しでも気を紛らわそうと、彼に話しかけた。

「すごい渋滞ですね。工事とかですかね?」

「……岩ですよ。岩が、道路に降ってきたんです」

 彼は嘘とも誠ともつかない声色で眉一つ動かさずサンドイッチを頬張っていた。

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