第19話 バイオ

 生物学の権威者であるオオジ氏はこの日学会にて、画期的な発表をした。それは生物の中、遺伝子に含まれている“CR信号”という存在の発見である。CR信号は五種類存在し、その全てが他のCR信号と結合するのだという。それを活用すればガンや筋萎縮などの難病を、別の生物のCR信号を組み込み完治できるのだというのだ。

 この発見は生物学会のみならず、医学や農業、環境保全などの団体が注目し、一刻も早い運用をと遂には政府から莫大な研究費が給された。その甲斐あり、発見からわずか三年で医療、環境保全への運用が始まった。

 こうしてCR信号の発見から約十年。人類はガンの完治も達成し、長寿は確約されたかのように見えた。しかしオオジ氏ひいては人類は知らなかった。CR信号とは本来、新たな生物を生みだすために遺伝子に仕組まれた変異起爆装置であることを。

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