第21話 いわし雲

 先日本州を直撃した台風。各地域に未だ災害の跡が重々しく残る中、気象庁は台風によって発生した雨雲を分析していた。

「これ、巻積雲の群じゃないですか?」

 誰かがGPS映像を見つつ呟く。その声は自信なさげに消える。

 普通、台風の発生により上昇するのは積乱雲や乱層雲などの厚い雲である。しかし先日の台風で巻き上がった雲は、嵐の前に浮かぶような薄い雲が、無数に連なっていたのだ。小さな雲が密集し、乱層雲などに匹敵する巨大な雲となっていた。

 映像を見て、別の誰かが口を開いた。

「なるほど、群れる雲か。まるでサーディンランだな」

 以降、このような群れる雲は、いわし雲と名称された。

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