第18話 霧雲

 霧と雲の境目とはどこだろうか。外部から見れば、発生している高度でその区別はつくが、果たして内部にいる人間はその違いを判別できるのだろうか。

 もし私を取り囲むこの煙が霧に属するのなら、私の現状は「五里霧中」という言葉で表現できるのだろう。そう、私は迷っていた。

——私を含む山岳部の六人は、都心から離れた某県の山に来ていた。事前の予報では良好とされていた天気だったが、予想だにしない雷雨や土砂崩れによって、私たちは山に閉じ込められた。救助を求めて私たちは山頂付近を目指していた。だが。

 気づけば部員は私一人になっていた。山頂へ向かうほど空気は薄く、道も険しくなる。荷物は道中で捨て生命維持に必要な分だけを携え、ひたすらに上へ——。

 私は休息を取り辺りを見る。霧ならいつか晴れるだろうが、雲だとしたら……。

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