第13話 レンズ雲

 調査のために某県の山に訪れている。一通り成果もあった後下山しようとすると、山より少し離れた上空に、碁石のような形のレンズ雲が浮かんでいた。

 レンズ雲の由来はあの形が凸レンズに似ているから名付けられたらしい。名前自体はさして嫌いではないのだが、ただ。レンズという名前を聞くと、どうしても何者かの視線を暗に示唆しているようで、正体不明の不安を覚えてしまう。

 麓まで降りて舗装路に出た。一先ず安心したので、先ほどから空中に浮かんでいるレンズ雲を見に行こうと思う。

 しばらく歩いて目的の雲に近づく。雲は扁平型で厚い。雲の向こうは見えない。

 やはり私の思い込みか。せっかくなのでレンズ雲をカメラで撮る。

 と、雲の中。レンズ雲に何者かの姿。鉱石のような光。あれは……瞳だ……。

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