第15話 マーコール

 我ら麓の民族には、先祖代々の悩みの元凶がいた。今日も屈強な村の男たちが各々武器を携え、崖で眠るそれの様子を探りにいった。

「いたぞ……悪魔の遣いだ」

 村の長が声を絞りつつ話す。男たちの僅か十メートル先に、それはいた。

 それは山羊だった。だが、異質なのはその角である。その一対の角はドリルのようにぐるりと捩じれていた。体躯も大きく、もはや自然に生まれた動物でないことは男たちの目に明らかであった。

 長がそっと近づく。すると気配を察知した山羊は唸り声をあげ、男たち目掛けて襲ってきた! たまらず男たちは四方八方に逃げ、悪魔の遣いはまた寝床へと戻った。

 この歪な角をした山羊が“マーコール”と命名されるのは、もう少し後の話。

 

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