第13話 よる

 〈夜に外へ出ると、幽霊に連れていかれちゃうよ〉

 昔はよくそう教えられていたし、その言いつけを素直に守っていた。けれど大人になると、出かけるのに昼も夜も関係なくなってきてしまう。

 今日だってそうだ。

「いっつもこんな風に夜更かししてるの? 不健康だよ」

 コンビニへ寄った帰りに妻と会ったので、一緒に歩く。中秋の名月を眺めつつ帰路を共にして、数分もしない内に二人の家が見えてきた。

「それじゃ、また来年ね。健康には気をつけてよ」

「……うん」

 入口を開けて自宅に帰る。自分だけの家の中に、一条の月明かりが流れていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る