第8話 カンガルー

 突然だが、俺は今生死の瀬戸際に立たされている。支給された銃器は弾倉が底を尽き、右のふくらはぎを弾丸が貫通していた。支援部隊も続々と敵にやられていく。敵か味方か分からない銃弾が、民間人のいない都心を飛び交う。

「隊長! 先ほど、B部隊との通信が途絶えました。恐らく」

「分かった……ちっ、アレを使うべきか……」

 俺は本部へレベルⅢ・緊急信号を発する。そして、数分後。

「“カンガルー”が来るぞ! 退避しろ!」

 俺が隊員へ叫んだ瞬間、200メートルあるビルを跳び越えてそれはやってきた。人型の兵器は跳びながら敵陣へ一目散に突っ込み、蹴る殴るの白兵戦を仕掛ける。巨大兵器の四肢が動くたび飛散する瓦礫を、俺たちは避けながら撤退した。

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