第7話  蛍

 昔は近所の山に行けば、無数の蛍が淡い光を灯しながら飛行する光景が見れた。だが森林開発の影響からか、現代は田舎でも蛍の姿は見られない。このまま次世代の子供たちは、蛍の光が踊るあの景色を知らないままなのだろうか。

 なんとかできないものか。いずれ消えゆく命でも、せめて私たちの手で守っていくことは出来る筈だ。小さい光でも生き続ける蛍のように……。


 「爺ちゃん、ただいま。寂しくしてたか?」

 青年が仏壇に手を合わす。眼前には蝋燭と、笑顔で映る老人の遺影写真がある。

「爺ちゃんの山、今年も蛍がたくさん来たよ。色んな観光客が静かに見てたんだ」

 亡き祖父の事業は好調だと青年が語る。蝋燭の灯火が誇らしげに光って見えた。

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