第9話 戻る
「あっつ……」
正午。男は三十六度の猛暑日にも関わらず、エアコンや扇風機を稼働させていなかった。何故ならそうしたかった訳ではなく、そうせざるを得なかったからである。
昨晩、都心を大型の台風が襲った。翌朝、台風の影響により一時的に電気が通らなくなると、男を含む都心の現代人は猛暑の中電力の復旧を待つしかなくなった。
「これじゃあ二十世紀に逆戻りだ……」
ボタンが押されたまま停止する扇風機を見つつ男が呟く。充電されないスマホに目もくれず、男は本を読んでいた。桶に氷水を張り、両足を入れて涼を得ている。
午後二時、団扇より強い風が男に吹く。見ると扇風機の羽が高速で回っていた。
「よかった……今日中に電気が戻ってきて」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます