第4話 ペトリコール

 この街では、雨が止んだあとにアスファルトの下から靄が浮かび上がる、という現象が起こる。その靄は様々な身長の人型をしており、街の空気が乾くその時まで子供のように遊ぶ。いつしかこの街の住民たちは、その人型の靄の名を「ペトリコール」と呼ぶようになった。

 本日、夕立があがった。叢雲が空を埋める下で、ペトリコールたちは現れだす。

「ママ、ぺとりこーるが来たよ!」

 少年少女は地面から現れる靄を遊びに誘い、ペトリコールたちも無邪気に彼らと遊びだす。思い思いの時間が過ぎ、とうとう別れの時間がやって来た。

「ばいばい! また遊ぼうね、ぺとりこーる!」

 霧消してゆくペトリコールたちに向けて、少年少女は高らかに手を振った。

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