第22話 Astronauts

 1969:我々は成し遂げた。有史より望んだ、宇宙への第一歩を踏み出したのだ。


 手記を発見した。五十年前に私が記したものだ。

 当時アポロ11号の搭乗員だった私は、何を思ったのか、同じ乗組員たちに置き去りにされた。地球より苛酷な環境下で、私は一人孤独になった。

 あの時から五十年経った、と思う。だが、不思議なことに私の肉体は地球上で暮らしていた頃よりも老化が遅くなっていた。およそ二万日という時間を月の上で過ごしているが、私の体は地球換算で一年ほどしか老いていない。

 最近新たな発見をした。宇宙服を身に纏った人間が、度々私の上を通過していくのだ。記録しておきたいのだが、手帳はあれどペンがないので出来ない。残念だ。

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