第25話 虱

 「——っつー、かゆっ」

 後頭部を掻きむしりながら、男がぼやいている。

『おい、目標地点が近づいているぞ。体制に入れ』

「うぃーす」

 男は無線機の声に渋々応答する。そして、爆弾槽のハッチを開いた。

『いいか、虱つぶしだ。一人たりとも生かすんじゃないぞ』

 無線機から、力強いが抑揚のない声がする。

「上官、俺の頭にも虱が沸いてるんっすけど」

『知るか!』

 爆砕される街並みを眼下に、パイロットの男は爆撃機を旋回させた。

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