第26話 現人神

 小学生時代にカリスマがいた。美人で、頭脳明晰で、人柄がよく、誰からも愛されていた。あまりにも彼女が完璧だったから、誰が呼んだか知らないけれど彼女は周りの人間から「神童」だとか「現人神あらひとがみ」なんて呼ばれて、慕われていた。

 俺は彼女が憎かった。常に彼女の後を追っているのが悔しくて、いじめるようになった。周りは常に彼女の味方だったが、彼女の泣き顔を見ると気が晴れていた。

 俺は小学校時代に飽き足らず、中学、高校、大学時代まで彼女を追っかけた。

 彼女は年を取るにつれ、昔のような輝きを失っていった。時が経つほどに彼女は凡才へと落ちぶれていき、彼女の周りからは自然と人が離れていった。

 現在、俺は彼女と同棲している。俺の視界の先でだらけている彼女は、就職をする気がないらしい。彼女という現人神を信仰しているのは、現在、俺しかいない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る