第22話 舌つづみ

 僕の幼なじみの安心院あじみは、ちょっと変わった食事の時間を過ごす。それは、

「トキ君いつもお弁当ありがとね~。それじゃまずは卵焼き、いただきまーす!」

 ポンッ!

……昼の教室中に、小太鼓を鳴らしたような澄んだ音がする。安心院は美味しいものを食べると、つづみの音がどこからか鳴る“病気”なのだ。

 安心院がご飯を頬張る、ポンッ。いい音だ。春雨サラダ、ポポンッ。良かった、味付けが気に入ったようだ。ハンバーグ、ポンッ。きのこのバターソテー、ポンポンッ。きんぴら、ザスッ。あっ、安心院はゴボウ苦手だったな。卵焼き、ポンッ!

「ふふっ、鳴り放題だったね。ごちそうさま! 美味しかった!」

 こころよい音を鳴らしながら彼女は完食した。安心院の満足気な顔で、僕も満足だ。

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