第18話 絵画の妙味

 館内は大勢の来客が着ていた。この動員数を見ると、改めて先生がいかに画家として注目されているかが、見ただけで分かる。

 僕が観たい作品は、『加茂川かもがわの水』という作品だ。

 目当ての作品の手前まで来ると、先生が立っていた。

「やぁ、着てくれて嬉しいよ。君もの鑑賞にきたんだよね? 歓迎するよ」

 先生は僕を、特別に個別の部屋に通してくれた。枠にはまった小窓がある。

 小窓から見えるその景色は、かなり奇妙だった。巨大な風景画と、それを見る大勢の人。まるで、観られることを想定したかのような精緻な絵画。

は、観る人がいて初めて価値が成立する。君にはそれを知ってほしかった」

 先生が隣で囁く。僕は絵画を眺める人々を、いつまでも眺めていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る