第5話 鏡

 真夜中のとある時間に鏡を見ると、鏡の中に吸い込まれてしまうらしい。

 そして偶然、現在がその時間になっている。丁度、暇つぶしにもなるし、話のタネにもなりそうなので、実践してみる。やばくなったら逃げればいい。

 方法はシンプル。現時刻に鏡を十秒直視するだけでいい。

 が、今手持ちにはコンパクトミラーしかない。まぁ、これでいいか。

 コンパクトミラーを直視してみる。私のつぶらな二つの瞳が映っている。数秒見つめていると、鏡面が石を投げ入れた湖面のように揺らめきだした。この状態でいいのか? とりあえず右手を入れてみる。特に違和感はない。ここからどう体を入れようかと思ったとき、右手が“何か”に触れた。短く悲鳴を上げて、反射的に手を引っ込めてしまう。手を確認する。私の右手は、指が全て無くなっていた。

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