・十行小説ー七月分 「み」

第1話 お月見

 「お月見をしましょう」

 放課後、彼女が僕に出し抜けに言ってきた。

「いつですか?」

「今日よ。今日の真夜中。水鳥公園に集合で」

 それだけ告げると、彼女はそそくさと帰り支度を済ませてしまう。そして教室の扉の前まで来ると、ゆっくりこちらに振り向いて、

「待ってるから」

とだけ告げ、足早に帰ってしまった。

 何か怒らせることでもしたか? 疑問と不安の中、今日の月齢をスマホで調べてみる。――今夜の月齢は二十六の、夜明けに昇る月。彼女は何を考えてるんだ?

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