第9話 子持ちししゃも

 「由美子ゆみこ、それ食べれないの? もらっていい?」

 由美子はこくりと頷き、友人に子持ちししゃも揚げを渡す。久しぶりに会った二人は、居酒屋で夜を過ごしていた。

「さっきから日本酒ばっかだけど……、ほら、この温泉卵は、どう?」

「……ありがとう。でも、ごめんなさい」

「そっか。枝豆は食べれる? 意識しなきゃ、ね?」

「……ごめん、まだ駄目みたい。ねぇ、もうこんな時間。お子さんは大丈夫?」

「あ、そう、だね。由美子、また今度ね。次は場所変えてランチでもしようね!」

――由美子は二ヶ月前、流産をしていた。その経験がトラウマとなり、それ以来、生まれてくるはずの命を喰らうことに、極度の抵抗と恐怖を抱いていた。

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