第6話 セント・エルモ

 「嵐が来るぞ! 帆を畳め!」船長ががなり立てた。

 空腹と長旅で憔悴しきった船員たちに騒ぐ気力は無かったが、振り絞って返事をすると、甲板上を大慌てで動き、てきぱきと三本のマストの帆を畳んだ。

 数分後、船長の言う通り嵐が襲ってきた。雷光を伴った暴風雨が船を襲う。操舵手が危うげに舵を取る。船医は、傷ついた船員の手当てをしていた。

 私はメインマストを見上げた。空は雷鳴が轟く曇天である。気が沈んでしまいそうだと私が思っていると、視線の先、マストの先端がビカッと光った。

 神の威光か……。私は十字を切って、強く手を握る。すると、轟音と共に僅か数ヤード先を雷が迸った! 私を含んだ船員たちはただ騒ぎ、恐れおののくことしかできなかった。その後、嵐は治まった。海面には、麻痺した魚類が浮かんでいた。

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