第3話 月に叢雲
満月の夜に財布を振ると、金運が上がるらしい。最初にその迷信を聞いたときは、そんな馬鹿な、と一笑に付していた。が、ここ最近なぜか実入りが少ない。仕事が上手くいかず、今月の給料は、先月より落ち込んでいた。
自宅に帰り、窓から顔を出してみる。既に暮れていた空は、厚い灰色の雲が張り巡らされ、星も見えない一面の闇夜だった。私はおもむろに通勤鞄からダークブラウンの長財布を取り出すと、窓から手を伸ばし、軽く財布を振ってみた。
実感がわかない。やはり月が出ていないと駄目なのか? その後、私は窓を開け放しにしたまま、三十分おきに夜空へ財布を振ってみた。月の見えない夜空へ。
三時間を過ぎたあたりで止め、私は就寝の準備をする。ふと気になり、私は月齢カレンダーで今日の月を調べてみた。絶句した。今日の月齢は――新月だった。
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