第2話 じゃがいも

 今日、監督が俺を叱っているときに「じゃがいも野郎」という言葉をよく使っていた。

 じゃがいも野郎とはなんだろうか。俺はその疑問を抱いたまま、バッティング練習に向かった。打ち込みメニューの半分が終わり、休憩時間になったので、俺はトレーニングパートナーに、じゃがいも野郎について意見を求めてみた。

「あぁ。それって、“芽が出ないやつ”って意味だと思うぞ」

 そうか。何年経っても目立った活躍も出来ずに、万年ベンチウォーマーな自分を監督は、芽が出ないまま出荷されるじゃがいもに例えたんだ。

「でも、じゃがいもの芽って毒あるらしいから、出ないほうがいいのかもな」

 芽が出ないほうがいい。その言葉が煮えものように、脳裏にこびりついた。


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