第12話 あぁ砂漠
砂漠に行ってみたい。
砂は見たことがある。海の底に無数に積もった細やかな粒が、海流や魚の動きで舞い上がる様子も知っている。でも、私の知る砂はそれだけ。常に水気に包まれた湿った砂しか知らない。
私は砂漠を見てみたい。人の気配のない夜に、私は浜辺に行く。さらさらと乾いた石英やガラス交じりの砂を手で掬って、指の隙間から零れ落ちる一瞬に見惚れることが、私の密やかな楽しみなのだ。砂浜を右に左に眺めながら、この光景が果てしなく広がる「砂漠」とはどんな場所なのだろうと、想像上の砂の海を泳ぐ。
もしもこの下半身が人間のような二本足になったら、すぐにでも砂漠へ向かうのにと、ヒレ足をくねらせながら私は海の深奥へと戻って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます