第12話 あぁ砂漠

 砂漠に行ってみたい。

 砂は見たことがある。海の底に無数に積もった細やかな粒が、海流や魚の動きで舞い上がる様子も知っている。でも、私の知る砂はそれだけ。常に水気に包まれた湿った砂しか知らない。

 私は砂漠を見てみたい。人の気配のない夜に、私は浜辺に行く。さらさらと乾いた石英やガラス交じりの砂を手で掬って、指の隙間から零れ落ちる一瞬に見惚れることが、私の密やかな楽しみなのだ。砂浜を右に左に眺めながら、この光景が果てしなく広がる「砂漠」とはどんな場所なのだろうと、想像上の砂の海を泳ぐ。

 もしもこの下半身が人間のような二本足になったら、すぐにでも砂漠へ向かうのにと、ヒレ足をくねらせながら私は海の深奥へと戻って行った。

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