第11話 バックパック

 日本というのは平和な国だ。治安がいい。人が優しい。食べ物が旨い。他宗教に寛容である。都心の街並みが美しい、等々。挙げていけばキリがない。

 今、僕がいるこの歩行者天国も日本らしいと思う。わざわざ歩行者専用の大通りを設ける親切心、そこに天国と名付ける洒落っ気も素敵だ。

 この国で僕はたくさんの思い出を手に入れた。その全てがこのバックパックに詰まっている。ガチャガチャの景品、抹茶味のお菓子、食品サンプル、伊万里焼の皿、数本の日本酒瓶、「正義漢」と漢字で書かれたTシャツ、財布、サバゲ―セット一式、現地で調達したポケットティッシュ、チラシ、パスポート、マリファナ、サバイバルナイフ、オートマチックピストル、そして手榴弾と、教典、母国の旗。

 後はこの国で当初の目的を達成すれば、僕は晴れて主のもとに迎えられるのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る