第13話 ゾンビの自覚

 桜の樹の下には屍体が埋まっている。その屍体は僕だ。

 僕は殺されたんだ! 当時付き合っていた彼女に、両手に握りしめられたカッターナイフで頸動脈を掻っ切られた。薄れゆく意識の中で最期に僕が感じたのは、泣きじゃくりながら僕の亡骸を抱きしめる彼女の温もりだった――。

 はずなのに。

 何時からか、僕は意識を取り戻した。指を動かすと、冷たい感覚を覚える。僕は暫く思案し、自分が地中にいると結論づけた。次に動こうと試みるが、木の根が絡みついてきて思うように動けない。なんとか這い出ようと力の限り身動ぎする。

 外に出ることが出来たのは、目覚めてから大分経った後だった。背後を見ると、夜桜が妖しげに峙っている。折角甦ったのならば、まずは彼女に会いに行こう。

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