第2話 The Tank

 パラマト戦争が開戦して約三年、戦車兵として従軍していた俺は、作戦のため隣国の国境にいた。

 「めんどくせぇ……」

 葉巻を口に加えながらぼやくと――ボォン! 近くに配備されていた鼠色の戦車が、砲撃音を轟かせた。しかし、その後に聞こえる筈の爆発音はせず、他に配属されていた兵たちも、特に驚いた様子は見せなかった。

 「……悪かったよ。しっかりやるからさ」

 俺は戦車を宥める。傍から見ると気が違った行動に思えるが、これは戦車兵である俺の責務の一つだった。というのも、この戦車には――自我があるのだ。

 因みに、戦車こいつは鬼教官気質らしく、弱音を吐くと空砲で檄を飛ばしてくる。

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