・十行小説ー五月分 「く」

第1話 一般男性、小説を書く

     なんてことだ。本当に私はやってしまったのか……。


――きっかけは高校時代、当時の文芸部の顧問に勧誘されたのが始まりだろうか。

当時から私は、勉強というものが不出来だった。でも、本を読むことは好きだったので、国語の教科書に掲載されていた古典や近代文学を、眼光紙背に徹すほど読んでいた。おかげで現代文や古典の試験結果は、他の教科よりかは点数が良かった。

 そのアンバランスさが目に留まったのか、ある日、当時の文芸部顧問が私を勧誘してきたのだ。私は別の部活に所属していたので、その時は勧誘を断ったのだが、そこから、自分の人生に「執筆」の選択肢が加わった。その選択肢は年月が経つにつれ脳裏でみるみる主張を激しくし、遂に俺は――今日、小説を書いてしまった。

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