第13話 球場で何が起こったのか

 私は車内ラジオで野球中継を聞いていた。今、試合は最高潮を迎えている。

 『さぁ、試合は九回表。ツーアウト、満塁。ここでバッターは本試合で二度ホームランを打ち立てています、四番、涌井わくいです』

 私はこの涌井という選手が好きだ。甲子園時代からの、言わば追っかけである。

 『さぁ、この絶好の局面でピッチャー、投げた。速いストレートを、打った! 涌井! 力強く振った。ボールは大きく弧を描いています! これは、これは出るのか? 三度目のホームラン! ボールは! そのままの軌道で――ザザッ』

 あぁ、トンネルに入ってしまった。暫く後、トンネルを出る。涌井の打球は?

 『――なんということでしょう! 一点も取れず、無念の無効試合判定です!』

 ?! 何が起こった? 点は? 打球は? というか涌井は?! 涌井?!


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