第10話 霊の正体は何者か

 那奈ななはこの春から新社会人である。彼女は、駅に近いアパートの二階で一人暮らしを始めた。家賃も手頃で、景観もよかったので彼女は満足していたが、ただ一つ、この部屋には『霊』がでるらしく、那奈はその点が不安だった。

  ―   ―   ―

 午前二時、彼女は目覚めると、金縛りにあっていた。全身がぴくりとも動かないが、瞳だけは動かせるらしい。(でたか……)と心の中でため息をはく。

 違和感は胸元に感じていた。どうやら霊はそこに居るらしい。那奈は暫く天井を眺めていたが、霊は去る気配がないので、意を決っして胸元に目を遣ると、

 『……ニャー』

 と、半透明の三毛猫が、円らな瞳で那奈を見つめて、短く鳴いた。

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