第9話 内容に覚えはあるのか

 男は本を眺めていた。ハードカバーのその本は、写真が内容のほとんどを占めており、その写真に写っているのは、主に若い男女であった。

 男はその写真群を流し見しているとふと、その写真のなかに、

――自分の姿を発見した。

 写真の中の自分は、見知らぬ男女と写っており、時折仲良さげにレンズに笑顔を向けている。何故か男は、この男女に覚えがあるように思えた。

 自分はこの男女とどういった関係だったのだろう? 男は黙って考えこむ。自分の記憶の底をさらいだし、やがて、男は口を開いた。

 「ごめんなさい。やっぱり、思い出せません……」

 申し訳なさげに、記憶をなくした男は、卒業アルバムを担当医師に返した。

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