第6話:|焔虎《フレイム・タイガ》
いったい彼らは何合、斬り結んだのであろうか? 10? 20? いや、50合はくだらないだろう。シャクマ=ノブモリとマッゲ=サーンはそれほどに朱槍と
(こいつはたまげたぜっ。S.N.O.Jにもらったこの身体の能力でも、勝負の行方はわからないってかっ!)
始祖神:S.N.O.Jがシャクマをこの世界に呼んだ時に、彼の魂の器となる身体をS.N.O.J自ら、創り出したのである。S.N.O.Jが何を考えて、シャクマの魂を今の身体に入れたのかは、シャクマ自身にはわからない。だが、これは『今度こそ、
シャクマがこの世界にやってきて、真に守るべき
(姫は無事に逃げ切ってくれたかな……?)
シャクマがそう思った瞬間であった。シャクマの右肩の防具がマッゲ=サーンの渾身の一振りで斬り落とされたのである。
「ふっ……。今、女のことを思っていただろ? 頬がたるんでいたでゴザル」
「うるせえっ! 少しは思い出にふけさせろってんだっ!」
シャクマの抗議を受けて、マッゲはクックックと笑ってしまう。そう言えば、南の砦に向かったミッフィー殿は無事であろうか? 何かしらの罠にひっかかり、怪我をしていないだろうか? と思うのであった。
「おい……。お前こそ、今、女のことを思っているだろ? 頬がたるみきっているぜ?」
「おっと。拙者としたことが、戦いの最中に物思いにとらわれてしまったのでゴザル」
おどけた雰囲気でマッゲがそう言うモノだから、ついシャクマも、はーははっ! と大笑いをしてしまうのであった。ひとしきり笑い合った彼らは、それぞれに朱槍と
ガギイイインッ!
耳をつんざくような金属音が2人の間で起きる。マッゲが右手に握っていた紅い
「勝負ありだな。退くなら追わないぜ?」
「ふっ。まことに
「何を言ってやがるん……」
シャクマがそこまで口から言葉を漏らした時であった。いつの間にか、マッゲの左手には直径15センチメートルほどの紅い珠玉が存在していたのである。しかも、その珠玉から天を衝く火柱が舞い上がる。
(こいつ、俺と一緒に自滅するつもりなのか!?)
シャクマは火柱に巻き込まれてなるものかと、バックステップで、マッゲから大きく身を離す。マッゲは珠玉が創り出す火柱の中心に居た。どうにか難を逃れたシャクマであったが、その火柱の中でうごめく存在を視認する。
「う、嘘だろ……。こんなのどうやって相手しろってんだ!?」
天を衝く火柱が収まっていくと同時に、その火柱を全て吸い込み、急激に巨大化していく物体があった。それは全身が燃え盛る炎で出来た全長5メートルの虎であった。
その巨大な
シャクマは、ぐわっ! と悲鳴を上げながら、すぐさま自分の両耳を両手で抑える。だが、それでも
その音による衝撃を受け、身体をよろめかせるシャクマに対して、
ドゴオオオンッ! という音と共に、
しかしながら、シャクマはすぐさま身を起こし、またもや腰に結わえた小袋に右手を突っ込み、紅い
シャクマが槍を上段構えにしたまま、助走をつけて、上方へジャンプする。そして、渾身の力を込めて、
「全然、通じてねえ!?」
シャクマが驚くのも当然であった。勢いをつけた槍の上段叩き割りはシャクマが着ている
顔面にほんの軽くめり込んだ槍を振り払うかのように、
その宙に放り投げられたシャクマを、ハエを叩き落とすかのように
そこでシャクマは3度目の驚きに襲われる。マッゲとの斬り結びで、逆にマッゲの
「冗談は、よしこさんだぜ……っ」
しかしながら、シャクマの心までは折れていなかった。身をひるがえし、足から地面に着地した後、腰に結わえた小袋に左手を突っ込み、紅い
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