第2話 ミキ

ミキは絶望した。いきなり会社からクビを言い渡されたからだ。いきなりナントカとかいうステーキ屋ぐらい寝耳に水だった。理由は営業成果が3年働いてたった2件だけということだ。1年のノルマが20件なのにだ。どうやら今月いっぱいでやめなければいけないようだ。ミキは絶望している。


その日の仕事が終わり、家に帰る途中でコンビニに立ち寄り、ビールのロング缶2本を買って帰った。飲まなきゃやってられないのだ。家に着いた。鍵を開けて明かりのついていない部屋に入った。部屋の電気をつけて、荷物を机に置いてため息をつきながらベッドに飛び込んだ。これからどうしようとかこのまま野垂れ死にになるのかとかがぐるぐる頭の中をめぐっている。目標もなく日々を送っていたミキは仕事もなくなってしまい、生きる意味なんてあるのかとさえ思っていた。


落ち着いてきた。すると、体を起こし部屋着に着替えた、買い置きしているカップ麺とサバの味噌煮の缶詰とチンするタイプのご飯をだして用意し始めた。

スマホを見ると通知が来ていた。ニュースアプリの通知で、『好景気!それでも増え続ける低所得』なるニュース記事だ。今のミキをみて通知しているのかと思うほどタイムリーだった。その記事はよくある政権批判のもので、ほぼ関係ない内容だった。

スマホを見る必要なんてないと感じ、ベッドに投げ込み夕飯の用意を続けた。


夕飯を終え、テレビを見ていた。すると、思いがけず目を奪われた。「街で出会ったイケメンさん」と題された番組に登場していた男だ。ミキよりも五つ下で銀行に勤めていると情報が出ていた。「へえ、こんなイケメンいるんだ。」と思いつつテレビを見ていた。見ているとどうやら同じ区にいるらしく、ジョギングが趣味らしい。ミキは会社をやめたら、ジョギングして彼を探そうかと変なことを思った。

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