第3話 スーパーカブとの遭遇

愛菜がスーパーカブを拾ったこともアゴチャイチー遺伝子の影響なのだろう。普通の大学生は得体の知れないスーパーカブなんか拾わない。



愛菜が利用している駅と自宅までの間には住民が利用するゴミ捨て場があった。

曜日ごとに捨てるゴミの種類が決まっており、燃えるゴミは設置してある黄色い大きなネットで覆う決まりになっていた。


そのネットに覆われたゴミの中に”それ”はあった。愛菜が大学3年生になる少し前のことだ。いつもとゴミ捨て場の様子がなんとなく違って見えた愛菜は、ネットに近づいてみた。


近くまで来ると、エメラルドグリーンに光る車体が見えた。これがのちにオッサムとして愛菜の片腕となるスーパーカブである。


が、しかしその時はスーパーカブを持ち帰るには至らなかった。愛菜はいつも時間ギリギリで生きていたので、そんな余裕など無いのである。次の日も、その次の日も、横目でスーパーカブの存在を確認するにとどまった。


スーパーカブを見つけて2週間ほど経った頃のこと。愛菜は友人のユーカ、アカヌと待ち合わせをしていた。


ちょうど家を出たタイミングで2人から待ち合わせの時間を1時間遅らせてほしいと連絡があった。


「1時間かぁ、やることないな」

つぶやいた瞬間、思いついた。

「そうだ、スーパーカブを拾ってこよう!」

この思考回路は、アゴチャイチー遺伝子を持つ者にしか分からない。


愛菜は早速、スーパーカブが待つゴミ捨て場に向かった。足取りは軽い。


そして、いつもと変わらずスーパーカブはそこにあった。


愛菜はスーパーカブに近づきハンドルを持って、ひっぱった。重い。しかし愛菜はアゴチャイチー遺伝子の影響で身体能力が飛躍的に上がっていたため、少し力を入れて引いたらいとも簡単にスーパーカブを救出することができた。

「思ったより軽いな〜」


ちなみにこの時の愛菜の腕力はゴリラと同じ、背筋はケインコスギと同等であった。


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肉まんと呼ばれた女 / ボンジョルノ岩瀬 著 @akaneiwa

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