第2話 西千葉のマシュマロガール

時は遡り2013年春ーー。

この時はまだ愛菜は普通の大学生として過ごしていた。


やわらかい日差しのなか、桜が散り始めた頃。

西千葉にあるキャンパスの空き教室で、愛菜は友人の河童澤ユーカ、岩手アカヌと共に学生手帳をめくっていた。3人とも履修登録がまだ終わっていなかった。


3人は大学1年生の時から仲が良く、大体いつも一緒に行動していた。

ユーカは頭に皿を載せており、アカヌは頭に大きなキノコをかぶっていた。愛菜はというと、白いマシュマロのような肌をきらめかせていた。


ユーカは授業一覧に目を落としながら(でも頭の皿は落とさずに)、

「3年生は教育実習があるから、それも考えないとね〜」

と2人に言った。

「わたし、高校の美術の先生に教育実習で先生のところに行っていいか聞いたら断られたよ!」

「アカヌは高校生の時に美術部サボりまくってたんだっけ」

愛菜が苦笑いしながら言った。


おしゃべりしながらも、3人は時間割をほとんど完成させていた。あとは学内のパソコンから履修登録を済ませるだけである。



本人は気づいていないが、愛菜はagoCというかなり珍しい遺伝子を持っていた。

この遺伝子を持つ者は、通称「アゴチャイチー」と呼ばれる魅力的なアゴが表出する。神に選ばれたアゴである。

アゴチャイチーを持つ者にはそれぞれ使命があり、成人するとその使命を達成するため身体能力が向上したり、ちょっとおかしな行動を取ったりと様々な変化が訪れる。


愛菜も例外ではなく、大学2年生の頃から、おかしな行動が目立つようになってきた。

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