見積もりダブり詐欺?

 2019年4月22日月曜日、夜。

 母からことの顛末を聞き、客観的事実を証言してもらった。

 まず、母はリフォームの見積もりを不動産屋に頼んだ。200万かかるといわれたので、来年に見送ろうとしていたときに、くだんの施工屋が

「65万であれもこれもやりますよ」

 と言って

「仕事させてください」

 と飛びこんできたので、それなら予算もあるし、4月からお願いするかもしれない。と、母は応えた。


 すると! その施工屋は3月のうちから勝手に足場を組み始め、見積もりを出してきたので母仰天。

 しかも、屋根をペンキ塗りしてもらうつもりでいたのに、急に

「屋根ボロボロで、ぜんぶ張り替えないといけない」

 と施工屋は言い出し、それならペンキ塗りの見積もりはいらないから、屋根ふき代の見積もりを頂戴と母が言うと、こんどは二枚の見積書を出してきて「使わないはずのペンキ代」もコミコミのお値段でこれはおかしい。


 聞けば、この施工屋は万事がその調子で、今までだと、12メートルの床を張るために60メートルの床材を発注しようとして、見積もりを増やしたり、いちいち確認をとらないといい加減な仕事をするらしい。今回もそう。

「この見積もりの中にあれもこれも、入っていると言ったはず」

 と問い詰めると、ごまかすように

「あれは大した作業ではないので、サービスです」

 というのだが……。


 例の二枚の見積書の不満を電話で強く言ったらカチンときたらしく、

「じゃあ、足場ばらして、やめましょうか?」

 と無責任。

 母は、中途半端でやめられては、他の業者さんを探さねばならないし、予算をオーバーしてしまう、と仕方なく我慢していた。しかし見積もりはいい加減。

 逆切れはされるし、サービスで行う(といっても、もとは65万円の中にコミだった)と言っていたはずの施工まで有料。つまり、65万より増額してきた。

 結局今回も150万近く見積もられたので、母が施工屋に

「前金と途中金三回も払ったから、あとは4~5月中に分割で払わせてもらうけど、最後の20万は予算がないから一年後になる」

 と断りを入れた。

 値切っておいて、支払いが遅れるのでは、とわたくしは言ったが、母が値切り交渉をしたわけではない。仕事をこの値段でさせてくれと施工屋が言ってきたのだ。


 さらに、和やかなふりをして、雨漏りをとめるチューブ(これはググったけれどゴムホースなのか、デコレーションイルミネーションなのか、エアチューブなのか筆者にはわからなかった)をヘラではがして入れ直すと5万になります。というから母は、

「じゃあそれでお願いします」

 と小声で言ったのに、その直後、ブロック塀の端に腰かけて、ペットボトルのお茶をいじりながら、

「奥さん、モンスターユーザーですから。(自分は)パワハラを受けてるって認識もってるんで。弁護士に言ったらパワハラ認定とれるって言われたし、慰謝料もとれるって。だから、慰謝料と一緒に施工料もらいますよ」

 と言った。

 そして、

「教育委員会にも何か言われるでしょうね」

 とダメ押ししてくる。

 母は、

「なんで教育委員会が関係するの?」

 と穏やかに尋ねた。すると、

「学校の先生なんでしょ。教育委員会が……」

「関係ないわよ。てい年退職したんだから」

「アルバイトしてるんでしょ」

「もうやめたの」

 というやりとりの後で、施工屋は

「やめたのか……」

 と。

 脅しがひとつきかなくなったのだ。

 その後も、

「慰謝料払ってもらいますんで」

 としつこかった。


 被害者意識があるようだ。

 しかし、この施工屋は仕事に取り掛かる際に、

【免停5年くらっているから、免許とりにいくための30万、前金でください】

 と要求して来た。公私混同もいいところなのだ。

「免停は関係ないでしょう。その30万は支払いの中から工面してください」

 と母はつっぱねたそうである。

 この施工屋は、母になにかともたれかかってくるのだ。

 初の顔合わせのときに、

【妻が入院しているから前金で20万ください】

【娘が病気だからお金ください】

 と言ってきて、仕事は遅々としてすすまない人なのだった。

 そのへんは不動産屋に言っておいた。

 母はこの件がすんだら、一生関わらないようにしたいと思ったそうだ。


 友人がくれたURLにアクセスすると、ろくろく物件も見ないで、激安価格を売りに適当な見積もりをしてくるのは、悪徳業者で間違いないということだった。

 わたくしはこれを印刷してホチキスでまとめた。

 起きてきた母が真剣に読んでくれるといいなと思いながら。

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