ムカツクってこういうことかなぁ?

 今、十五少年漂流記を読んでいる。

 本はいいなあ。

 嫌なことを忘れられる。


 だけど。


 わたくしは犬みたいな性格なので、他者にされたしうちをよく憶えている。


 今日、父がわたくしの部屋のドアをノックして、返事もしないうちからガチャリと開けるから、とっさにダメだと言ったのに。

「電気を消せ!」

 とこうである。

 わたくしはPCを触っているときは部屋を明るくする。

 それを事情も聞かずに命令するので、非常に気分がよくない。

 以前、プライバシーの侵害だ、と言ったら、

「おまえにプライバシーなんかない」

 と言い放ち、同時に

「おまえに善意なんかない」

「おまえに真心なんかない」

 と。

 だから、わたくしが人にあてた手紙を勝手に破り捨ててしまうし、きょうだいと連絡をとらせないようにする。


 わたくしはそれがなにに起因する言い草であるのかを考えた。

 あれだ。

 わたくしが病気の見舞金をいただいたとき、

「あげるよ」

 と言ったのだが母にだけあげたのを憶えていて、あとで

「オレに金をくれなかった」

 と愚痴っていた。

 それだろう。

 金銭のうらみは骨髄だ。

 しかし、わたくしが病気になったのは父に追いつめられ、思いつめたが故のことなので、その見舞金を父母にやるというのは、言葉にしただけでも奇跡のようなことだ。

 実際、母にはあげた。

 彼女はそれで差し歯を三本、新調した。

 普段父は、「お母さんの財産はオレのもの、二人は財産を共有してるからどれもこれもオレのもの」というようなことを言っていた。

 ならば、母にあげたお金は父にやったのと同じなわけである。

 だから、わたくしが病気の見舞金を父にやらなかったことで恨まれるのは筋違いもいいところ。

 え? それじゃない?

 じゃあなんだろう。

 

 他になにか言っていたっけ?

 わたくしが退院したときに、

「私は鬼になるぞ」

 と言っていた。

 それは前からだし、わたくしにはそういう父が普通だと思っていたので、

「普通だよ」

 と言ってあげたのに。

 人の思いやりがわからない人だ。

 なおさらつらくあたられた。

 そういう人にどうして、愛想よくしなくちゃいけないんだ。

 母に言ったら、

「男の人って、無神経だから」

 というが、世の中そうとばかりとは限らないと思うのだ。

 たまたまわたくしの身の回りに、そういった人物が多いだけなのではないかと。


 そして、父が一番に気にするのは実は「占い」である。

 父が母との結婚を決めたその決め手は、全ての占いで母と相性がよかったからなのだ。

 過去に自慢しているのを聞いた。

 そして、占いだと父から見てわたくしの生まれた星は相性殺界なのである。

 どうでもいい。

 ちなみに殺界といえば、わたくしからみて母と祖母は相性殺界であるが、距離感は良好である。

 母はわたくしの味方であるし、祖母は嫌味や圧力をかけてくるくらいなので、口をきかないことにしているから平気だ。

 ようするに父は女々しく自分勝手で情けない。

 相性殺界がなんだというのだ。

 わたくしのまわりには相性が最悪の肉親ばかりだというのに、傷つきながらもなんとか生きてる。

 父は子供を育てるスキルがなかった。

 正しくは女児を育てられない人だった。

 だから、そこは恨んでいないが、正直その事実に甘えられても困るのだ。

 

 父はいともたやすく「殺す」とかいいだす。

 わたくしの持ち物を、生ごみに出したり壊したりする。

 暑さ、寒さのさなかに、エアコンを切る。

 暗いのに、わたくしがつけたライトを消していく。

 わざわざわたくしの部屋に来て、それらを行う。

 母に話しかけようとすると、犬をあしらう手つきで黙らせようとする。

 すぐに暴力と圧力で押さえつけようとする。

 

 世の中の父親って、みんなこうなのかなと思ってしまう。

 彼は、明日の早朝に帰るという。

 明日なんて、待たなくてもいいのよ?

 ヘブン*ドアを開けてもよくってよ?

 わたくしは手を下さないし、知っているだれにもさせないけれど、彼が自滅したって知らん顔を決めこむくらい、造作もない。

 彼のことに関しては、恐ろしいくらい残忍な気持ちになれる瞬間がある。

 サディズムはこういうところに潜んでいるのだなあと思える。

 飴も鞭もない。

 一方で、父親なのだから敬うべきという、一定値のモラルは一応だが念頭にある。

 そういうときにわたくしの内部では、愛憎半ばするのである。

 父親なのだから、いつか変わってくれるのではと思っている。

 不毛だが、ひたすらパワハラとモラハラに耐えた結果である。

 わたくしの世代は年功序列や男尊女卑の思想が崩れて、まったくないので、そうでない父がひたすらうっとおしい。

 いちいち気に障る。

 小さい頃は、朝目覚めると覚えのない青あざがよく手足にできていたものだ。

 気にくわないと、躾だと言って、冬でも裸足で外におん出され、わたくしは町内を暖を求め、救いを求めてさまよった。

 今なら父のそれははっきり虐待だと言える。

 まあ、ネタにするからいいけれども。


 ちなみにわたくしの部屋のドアには「男子禁制」の紙が貼ってある。

 それを無視されたので、今日は一日中、ひどく苛立っている。

 パーソナルスペースの侵害ですわ!

 言葉で表現すればムカツクの一言だけれど、実際はもっともっと暗澹としている。

 今日の午後は台無しだった。

 読書もはかどらない。

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