第5話 九条家、遊園地へ行く。その2

僕ら6兄弟は遊園地へ来ている。弟達のこんなに楽しそうな笑顔を見られたのも、夢の国のチケットを送ってくれた父のおかげだ。


そろそろ日も落ちてくる頃だからホテルへ行こうと思った矢先に、六男の桃李が迷子になってしまった―――


「居たか?」

「あっちの方には居なかった」


碧と翠と柚黄には近くを探すように頼み、その間に赤璃と一緒に迷子センターへ来ていた。

三人も迷子センターに来て、探したけど居なかったみたいだ。


「赤璃...すぐ見つかるから」


桃李といつもベッタリな赤璃は今にも泣きそうな顔してるから、優しく頭を撫でてあげた。


「ぼく、桃李ちゃん探す!」

「あ、こら、待ちなさい!」


赤璃は迷子センターを飛び出した。僕は弟達にここで待ってるよう言って赤璃を追いかけた。


「赤璃っ...足速いな...」

「桃李ちゃーんっ、桃李ちゃんどこー!」


赤璃は自分の出る最大の声で桃李の名を呼んでいた。赤璃はそんなに大きな声を出す子ではない。きっとそれも桃李のために出せる声量なんだろう。


遠くから泣き声が聞こえる、子供の啜り泣く声だ。

赤璃もそれに気がついたのか、桃李の名を呼びながらそちらに走った。僕はそれを追いかけた。


「あかり...ちゃんっ...」


「桃李ちゃん!!真白ちゃん、桃李ちゃん居たよ!」

「桃李!」

「ぅっ...あかりちゃっ...ましろ、ちゃんっ...」


桃李は誰にも見られないように隠れて泣いていたようだ。強がりな所があるから誰かに泣き顔を見られたくなかったんだろう。


「赤璃が桃李を一生懸命探してたんだぞ。兄ちゃん達みんなもそうだ。だからもう泣くな、強くなるんだろ?」


目線までしゃがみ抱き締めて頭を撫でてやった。目を真っ赤にして腫らしていて、桃李のこんなに泣いた姿は初めてかもしれない。

急いで迷子センターへ戻り、スタッフさんにも挨拶をして夢の国を出た。


碧たちも凄く気を張って心配してたから、ものすごく疲れたみたいだった。


「ごめんなさい、兄ちゃん達...」

「良いんだよ。桃李が無事なのが何よりだ」

「そうだよ。とっくんに怪我がなくて本当に良かったよ。ね、みどくん」


碧と柚黄は優しく桃李の頭を撫でていた。

翠はむくれた顔をしてるけど、一番心配していた。


「ほら、俺の手掴んどけ。絶対離すなよ。あっくんもこっち」

「うんっ、桃李ちゃん行こ」


本当にツンデレはこれだから困る。翠の右手には桃李、左手には赤璃。少し翠は嬉しそうだ。


「よーし、ホテルに行くぞ!」

「柚黄に同意だ、桃李も元気が出たみたいだし早く行こう」


柚黄も碧も安心したのと、探し回ったので疲れているんだろう。双子たちに察せられないようポーカーフェイスを装っていた。


ホテルに行くとそこは父の経営するホテルで、従業員たちは僕らが来ることを知っていて、あれよこれよとサービスをされた。

僕のことを父の会社の人たちはみんな知っている。たまに神楽坂さんと一緒に状況確認しに来るからだ。なので従業員たちはほとんど顔見知りだった。

今日は客として来たのだから上司扱いだけはやめてもらった。


夜ご飯を食べ、風呂に入り終えた頃には疲れて眠そうな弟達の姿。

赤璃と桃李に関しては、もう半分ソファで寝てる。2人をベッドに運び寝付くまでそばにいてあげた。2人が仲良く手を繋いでぐっすり眠ったのを確認して僕達も眠りについた。


色んなことがあったけど、僕達にとって思い出に残るものとなった。

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九条家の6兄弟 らいおん @leo_7

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