第4話 九条家、遊園地へ行く。その1
数ヶ月前の話。弟達の学年が上がる前の冬休み、僕ら九条家6兄弟は遊園地へ行くことになった。
事の発端は柚黄だ。柚黄は中学に上がる前にあの夢の国へ行きたいと言うので、冬休みに1泊2日で行くことになった。
実は最初は夢の国ではなく、近くにある遊園地の予定だった。でも僕が神楽坂さんに会った時にその話をしてしまって、それを父に話したらしく、父が夢の国のチケットを手配して僕らの家に送ってきたのだ。
甘やかしすぎではないかと、神楽坂さんに相談したけれど、せっかく父から貰ったものだから有難く受け取って楽しんできなさいと、まるで父みたいなことを言われた。
柚黄も喜んでいたし、碧だって行ったことが無いから、思い出づくりに良いかと快く受け取ることにした。
「しかし、ホテルまで用意してくれてるとは、父さんも凄いな」
「外国からわざわざ日本のホテルとチケット用意するなら、帰って来れば良いのに」
碧も翠も珍しく楽しげなのが分かった。そしてこの二人が父の話をする事は滅多にない。それほど嬉しいんだろう。
「真白ちゃん!おれあれ乗りたい!!」
到着すると桃李は興奮して走り回り、急に止まったと思えば、絶叫マシンを指さしてそう言っていた。桃李は迫力のあるものや初めて見るものには興味を示す。その反面、赤璃といえば...
「真白ちゃん、ぼく怖いのイヤ...」
赤璃は絶叫やホラーは嫌う。怖いものは怖いと、ここに来てから口癖のように言うようになった。
「柚黄、桃李と乗ってきてやりなさい。僕も絶叫マシンは得意じゃないから」
「お!いいぞ!とっくん行こうか!」
「おい待て!ゆずだけじゃ心配だ、俺も行く」
柚黄も桃李に似て絶叫マシンは大好きだ。昔は翠も怖がっていたけど、今じゃ普通に乗る。柚黄と桃李だけじゃ不安だからついて行ったんだろうけど。ツンデレだなほんと。
待ってる間、碧と赤璃とでお土産屋を見て回った。
次は優しい乗り物に乗ろうとか、ご飯は何にするかとかそんな話をして、柚黄たちの乗った絶叫マシンの出口へ行った。
「だいにい〜」
「真白ちゃん!面白かったよ!」
柚黄と桃李は楽しかったのかさっきよりもっとテンションが上がってたけど、翠はぐったりしてて、今日はもう乗らないってブツブツ言ってる。
それからあちこち回ってそろそろホテルに行こうという時に事件は起こった。
「なあ真白、桃李が居ない」
そう言って翠が青ざめていた。
そして僕たちも同じく青ざめた。
小学三年生とは言ってもまだ幼い。こんな広い遊園地で迷子なんて...僕としたことが...!
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