第2話 長男の務め

僕、九条真白の朝は早い。6時前には起床して身支度を済ませ、弟たちの弁当を作る。三人分の弁当はそれぞれ違うように工夫して作る。

弁当を作り終えたら、残ったおかずを利用して朝ご飯の準備に取り掛かる。


碧は起こしに行かずとも自ら起きてくる。いつもあいさつの次に聞く言葉が“起こしてくれれば手伝うのに”だ。

碧は遅くまで勉強をしているのを僕は知っている。彼が僕の起きる時間に起きれないのも知っている。だから無理に起こしたりはしないのだ。


朝食をとり、弟たちを見送ってから家事の開始だ。


双子の弟、赤璃と桃李は8時45分に家を出る。9時登校だけど9時には到着するように行かせている。玄関の外まで見送らないと不機嫌になるから、姿が見えなくなるまで見守っている。


9時、ようやく家事が始められる。朝食に使った食器を洗い、早朝に洗濯をしていた洋服を外に干して掃除機を掛ける。

この家は二階建てで、面積が大きい。なんせ、四男までの各自室と双子の子供部屋。僕の仕事用の部屋に、ダイニングキッチンとリビング。客間が二部屋と、和室。それに加えて双子の将来の別々の部屋がある。まあ何もなけりゃあの二人は同室を選ぶだろうけど。


掃除が終わるころには11時を過ぎる。そこから僕の仕事の時間。と言っても、会社の商品管理や、経営するホテルやレストランの予約確認、売り上げ確認、社員の報告書確認だ。たまに社員のケアをしたりもする。

仕事で外に出ると言えば、月に1度ぐらいの頻度で副社長の神楽坂かぐらざかさんとの面会くらい。社員のケアの報告をしたり父の様子を聞いたりする。


父は、母が他界して一年もせずに海外へ飛んだため、約七年会っていない。飛んだ理由は大切な存在である母をを失った悲しみからだと思っている。表向きでは、会社の海外進出のためだ。弟たちには表向きで伝えているが、碧は前者だという事に気付いている。


正月には年賀状を送ってくれたり、誕生日や祝い事があると必ず贈り物をしてくれる父。そんな父の様子を、神楽坂さんは僕に伝えてくれるのだ。そしてそれを弟たちに教えている。


13時には昼食をとり、少し休憩をとる。時折、昼寝をしたり散歩もする。

16時には双子たちが帰ってくる。その時間には仕事を終えて彼らを出迎え、夕飯の食材を買いに三人で出かける。

買い物から帰ると碧と柚黄は帰ってきている。翠はいる時もある。


19時までには夜ご飯を作る。碧が手伝うというので、手を借りている。

翠が帰って来ない時は柚黄が電話を入れる。電話に出ないこともあるが、大半は出てくれる。

翠が遅く帰るときは、僕はいつまででも待って、帰ったら暖かいご飯を与えている。ただ、中学生なので、21時を過ぎれば連絡を何度も入れて、22時を過ぎれば叱る。僕が怒ると恐いのを知っている兄弟達は充分だと思ったところで止めに入ってくる。特に柚黄が気にかけてくる。カッとなった時は自分でも歯止めが効かないくらい説教してしまうのだ。


翠は遅く帰った日は必ず食器洗いを手伝ってくれる。説教をした後でも無言だがきっちり最後まで手伝う。時々碧も様子を見るついでに手伝いに来る。本当にいい弟達だ。


双子たちを23時には寝かしつけ、0時頃にもう一度仕事の最終チェックをする。

弟の試験が近いときは、僕を筆頭に和室で碧と翠と柚黄で勉強会をする事がある。

碧と翠は元々成績が良くて余裕があるので柚黄の勉強をよく見てくれる。どうしようもないバカとは言ったけど、やる気だけは誰にも負けていなくて、やれば出来る子だった。


試験勉強がない日は1時頃には寝る。勉強会をする日は3時ぐらいまでになることが多い。そんな日は和室に布団を敷き、4人で寝ることもある。


これが長男である僕、真白の務めだ。

日々弟達の成長を見守っている。

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