第6話 番豚

 エサとしてヌカともみ殻の混ざったモノを出されたので渋々食べる。


 「ブヒ…。」

 まずぃ。でも、いいわ!あんな思いするなら、食べモノってだけでましよ!でも!庭に直接はひどいわよ!せめて!お皿!


 そんなあたしに、という視線が突き刺さる。


 庭の隅に黒くて巨大な犬が寝そべっており、時折、目を開けて、あたしを見ている。


 「ブヒ…。」

 こ、これは、あたしのなんだから、あげないわよ…。


 「ガルゥ…。」

 お前がうまそうなんだよ…。


 「ブヒ?!」

 あたしを食べてもおいしくなんてないわよ!


 「ガルゥ…。」

 間違いなくうまい…骨までうまい…。あるじに叱られるから食わないけどな…。


 「ブヒ!ブヒ。」

 そ、そうよ!あたしを食べていいのはイケメンだけなんだから!今日からこの家にお世話になる乙女よ。名前は…ぶーちゃんらしいわ!よろしくね!


 「ガルゥ…。ガウ!」

 オレは、街守(まちのかみ)が隠密番(おんみつばん)、狼魔獣ダークウルフのブレイブ!!


 「ブヒ?!」

 あらやだ?!異名?源氏名?カッコイイ!!!あたしもつけようかしら、番豚(ばんぶた)がいいかしら?あー、ダメ。もっといいの思いつくまで保留。


 「ブレイブ。散歩にいくぞ。」


 「ガウ!!ガウ!!」

 ひゃっほー!!ご主人様!ひゃっほひゃっほー!!


 「…。」

 あんなふうに動物にならないように注意しなきゃ…。


 「ぶーちゃんあそぼー!」


 名前を呼ばれただけで、しっぽをブンブンふっていることに気づかないぶーちゃんであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る