第5話 豚のエサ

 イケメンに粗相を拭いてもらうなんて、なんてご褒…いや!そんな趣味ないわ!あたしはドノーマルよ!


 「千代。豚にエサやるから、こっちにつれておいで。」

 「おっとー。わかったー。」


 千代に抱かれて、うんしょうんしょと急な階段をおりていく。政さんが千代が転げ落ちないようにしっかりサポート。

 あらやだ、政さん中身までイケメン!


 「桜!桜!いないか?お花!お花!」

 「はーい!」

 「これを二号店に持ってておくれ。」

 仕事の会話で賑わっている番台のある部屋を通り、裏口に抜ける。


 「ブヒー。」

 あら。ここ裏庭よね?


 裏庭の奥にある木戸が開かれると、すごい勢いで悪臭が放たれる。


 「ブヒー?!」

 生ゴミが餌ですか?!


 「ほら食え。」


 「ブヒー!!」

 食うわけないでしょ!!


 ポイ!っと木戸の内側に放り投げられて、バタン!と閉じ込められる。薄暗い部屋に充満する悪臭。悪臭の発生源である生ゴミは、無造作に日々溜めていかれるのだろう、下の方のゴミはカピカピニ干からびているのが見受けられる。


 「ブヒ!ブヒー!!」

 出して!出して!臭い!臭すぎよ!!


 「ほら。千代もいくよ。」

 「う…うん。」


 「ブヒヒ!!!ブヒ…!ブヒ…。」

 お願い!なんでもするから行かないで!今行かれたら、豚の意識になって…なって…た、食べちゃうかもしれない…。お、お願いよ…。


 ブヒ…。


 「…。」


 ブヒ…。


 ギギギッと木戸が開く。


 「ぶーちゃん。大丈夫?」

 「ブヒーー!!」

 千代!千代!怖かった!怖かったよー!


 ペロペロと千代の顔を舐める豚を見て、越後屋 藤兵衛とうべえは、ちゃんとしたエサやらないとマズイなと思うのだった。


 フフフ!今の目は気づいたわね!あなたの大事な娘がけがされたくなかったら、ちゃんとした食事用意しなさい!!ペーロペロ!

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